冒険と 八ツ淵の滝
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ガリバー青少年旅行村に9:00着。旅行村は今年に限り10月末に閉園していることは事前に知っていた。旅行村よりちょっと下の空地らしきところに駐車する。
さあ、冒険の始まり(ガリバー青少年旅行村が閉園の時はお手洗いが使用できない。また道中にもお手洗いがないので注意!)。
「八ツ淵の滝」とは、下流から魚止の滝、障子の滝、唐戸(空戸)滝、大擂鉢、小擂鉢、屏風滝、貴船の滝(主瀑)、七遍返しの滝の8つの滝の総称である。ここには、山沿いの「初心者ルート」と、沢沿いで「魚止の滝」、「障子の滝」をめぐる「初心者禁止ルート」があり、中間の「唐戸滝」のあたりで合流していることを事前に調べてあった。
旅行村横に「八ツ淵の滝」登山道入口がある。入口はとても立派なハイキングロード。「魚止の滝」「障子の滝」を通る沢沿いのコースは「初心者禁止(危険)」という看板があちこちにある。しかし、滝めぐりのキャリアを積むためになんとしてもこのコースにチャレンジしたかった。
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初心者禁止ルートの入口
しばらくハイキングコースを進むと、「魚止の滝」方向への看板がある(ここにも「初心者禁止!」という看板がある)。わくわくぞくぞくしながら「初心者禁道」を下っていくと早速沢に到着する。
さて事前の情報では、この沢を渡る「心もとない橋」があるはずであった...がどこにも橋らしきものがない。「ついに危険なコースが始まったか!」と実感させられる。どこを渡るのかと思案しながら沢の岩岩を越えていくと、なんとか沢を越えられそうな岩や石が見つかりここはクリヤー。沢を渡るとすぐに急な斜面。とても道とはいえないところを、木に巻いてある赤いテープや布切れ等を頼りに登っていくと、「魚止の滝」に到達する。
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魚止の滝
さてここからが問題。「魚止の滝」の右崖を登っていくのだが、岩に打ち付けられた鎖にしがみつき、わずかな足場しかない所をかなり下の魚止の滝の滝壷を覗きながら回っていく。また鎖もないところもあり、先に進み崖の下に少し下りたところで相棒の万が一の滑落に備える。
まだ難関はこの先だ。ここでくじけるわけにはいかない。相棒から、「帰りもここを通るの?」と聞かれる。「いや、帰りは初心者ルートを下るから...。」
初心者ルートとの合流点までいければ..の話だが。
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障子の滝の前の岩登り
中央の鎖を左上端の梯子に向って登っていく。
そしてついに、「障子の滝」に到達する。ここが事前に聞いていた最大の難関である。なるほど...。滝正面の大きな岩の上から、いくつかの岩を辿って滝壷下の川に下り、川を渡るやいなや、対岸の岩に打ち付けられた黄色金具の足場をよじ登り、その先は鎖を辿って岩をよじ登り、さらに古びた梯子を登って行くように見える。
ここで初めて他の登山者の姿が見える。どこに???。遥か上の初心者ルートとの合流点らしきところに。どうやら初心者ルートから下ろうと考えているようであった。しかし、下るのを躊躇しているようだ。
我々は、ここで引き返しさっきの危ない所を通るのもぞっとするので、進むしかない..。岩を下り、小川の小石を跳び越え、すぐに岩にしがみつく。以外と登れるもの。
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崖の途中から唐戸滝を
崖をかなり登ったものだ..。
鎖や梯子を登ると、なんとこんどは長い崖登り。ロープにつかまり登るのだが、崖は土であり、ぼろぼろぼろぼろと崩れ落ちる。またロープも1m置きぐらいしか瘤を作っていないので、結構滑る..。 体力は相当消耗したが、それでもなんとかクリアし初級者ルートに合流。「初心者禁止ルートをクリヤーできた!もう初心者ではないんだ」という自負。ここで上から覗いていたご年配夫婦に会う。「下るのは怖いですよ」と一言声をかける。
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大擂鉢
初心者ルートとの合流点から、「大擂鉢」・「小擂鉢」を経由して「屏風滝」までは普通のハイキングロードである。
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小擂鉢
ただし事前の情報では、橋があちこちにありさくさく歩けると書いてあったが、橋など無い!今年続いた台風で流された(?)。
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屏風滝
美しい滝が続く。しかし、今から考えると何ちゅう危ないところで写真を撮っていたんだと思う。
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貴船の滝への鎖場
相棒はこんな所で写真を撮っていた。
「屏風滝」のあたりからまた鎖やロープが現れる。「屏風滝」から「八ツ淵の滝」の主瀑である「貴船の滝」までは、また崖に打ち付けてある鎖をつかんで進まないといけない。20m位の崖下に「屏風滝」の滝壷が見える。
「鎖から手を離さないで!」と相棒に声をかけながら、なんとか「貴船の滝」の正面の岩へ到達する。「貴船の滝」は官能的で美しい滝だ。
ふと相棒がなかなか来ないことに気がつく。「何かあったのか」心配して少し戻ったら、先ほどの鎖場で写真を撮っているのだ。おい、こんな危険なところで何をしているのだ、と一瞬青ざめる。
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主瀑:貴船の滝
さて、ここ「貴船の滝」(落差30m)正面の岩の上で4人の学生の集団にあう。この先どう進むのか思案しているようだ。一人は急な山肌に張ってある黄色いロープを登るのでは?と言っている。私は事前の情報を得ていたので躊躇せず登山スティックで今いる岩の下を示してあげる。集団のリーダらしき人が「まさか!」という顔をしガイドブックを読み直している。多分この集団は先ほどの「初心者禁道」は通らなかったのだろう。
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貴船の崖下り
ここは6m位の岩を鎖で下り、川に渡されたチェーンをたより岩や石を跳び越え、滝壷下の川の向こうに張ってある鎖にしがみつき、岩を回り、その先の垂直な梯子を登り、その梯子の頂上から、2本の鎖にしがみつきながら岩をよじ登るのだ。
リーダーらしき人は「ここは何ちゅーコースだ」と声を震わせている。事前情報を得ていなかったようだ。
仕方なくこの4人の学生は、綱にしがみつき、岩の下へと苦労しながら先に降りていった..。我々は先ほどの「初心者禁ルート」のお陰で大分慣れてきた。するすると岩を降り滝壷下の川へ。
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ご年配夫婦も「まだ若いものには負けん!」
すると、先ほどの夫婦がさっきの岩の上に現れた。崖下の川にいる我々を見てその岩を下りざる得ないことを悟ったようだ。
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貴船の滝壺下の川の向こうで
さて、滝横の梯子を登りさらに2本の鎖を乗り換えながら岩を登ると....。
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どどーんと15m岩壁
出た! 予想はしていたが、どどーんと15mの岩壁。 思わず笑いがこみだしてしまう。これがハイライトか。
何はともあれ、鎖にしがみつき垂直に5m位登った所で、水平の鎖に乗り換え少し岩肌を横に進み、さらに最後の10mの鎖に乗り移りしがみついて登る。怖くはない、というよりそんなこと考える余裕もない。
さて、なんとか相棒も岩の頂上についた。「帰りもここを通るの?」と聞かれる。「多分ね」と答える。実は迂回路もあるようなのだが、木々や草が枯れてしまって、迂回路がどこなのかよくわからないからだ。「帰りは綱にぶら下がってピョンピョンと崖を両足で蹴って降りるんだよ」と言ったら、「それはテレビでしょ、そんなことできるわけないよ」と相棒。
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遭難の碑
山に抱かれて 夏は緑に抱かれていった。緑は風に抱かれて木になった。木は森になった。森は山になった。その腕の中を今日も僕らは歩いている。何かを見つけるために。 故 宏 1992年7月 大津市 武田 栄夫 桂子
さて、「貴船の滝」の上に到達したら「遭難の碑」がありじ〜んとする。浩之君..でなく宏君!ご冥福を祈ります。
ここから最後の「七遍返し」までは距離はあるが、楽勝である(?)。川に橋はないが..。道はあいかわらず木に巻かれた赤いテープや紐や....。
ともあれ、「七遍返しの滝」に到達し、スティックパンの朝食。「七遍返しの滝」の前にはじめて「橋(?)」があった。ここは、「七遍返し」とは別の水脈にも滝が見えて、感動的かつ幻想的な一帯である。
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七遍返しの滝
「この景観のすべてがあなたへのプレゼントです。兵庫登山会」
という看板がある。これまでのロープ・鎖・足場等兵庫登山会が整備してくれたのかも。
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さて、帰り道だが、「七遍返し」から「15mの岩壁」まではなだらかだが、結構迷う。登りと下りでは景観が違うのだ。とんでもないところを下ってぬかるみで尻餅をつく。なんと相棒も同じところで尻餅。
さて15mの岩壁は私が先に下りて、相棒が下りるとき「足場は右足の下」とか「左」とか教えてあげる。岩下りは当然のことながら足場が見えないので、伸長の高い方が先に下りて足場を教えてあげるのがいいようだ。
その後、鎖と梯子を伝って「貴船の滝」の滝壷近くに下りる。ここでアベックが例の対岸の岩の上にいる。降りるのか?と指差して聞いているようだ。こちらからスティックを下に向け「そうだ」と大きく示す。彼氏は、彼女のことほったらかしでさっさと岩を下りてきた。このような人間関係は「夫婦」かな...等と想像する。
途中、「初心者禁止ルート」の入口に女性の上着がたたんでおいてあった。多分この女性は途中まで行って帰ってくるつもりだったのだろう。万が一帰ってこれないときのために、目印として上着を入口に残したと思われる。まさかと思うが「人生に疲れた」ということもないだろう。
「八ツ淵の滝」の登山を始めてから約3時間で駐車場に戻る。入口の看板にある「往復80分」はちょっと無理かも。
危険ではあったが楽しいアドベンチャーであった。くれぐれも登山靴と軍手は必須、そして「伸縮できるスティック」は便利(スティックは川を越えるとき、石が動かないかどうか確認するのに丁度良い。しかし、リュックにしまえないとロープが登れない。)。
最後に「鎖を離さなければ命には別状はない」ということ。 今回自信がつき、30本近くの梯子がある奈良県の「双門の滝」と、三重県大杉谷の「七つ釜の滝」も狙えるようになったとひそかにほくそえんだ(但し、大杉谷は今年の秋の台風で莫大な被害を出した宮川村にあり、いつ登山道が復旧するのかわからない状況だそうだ。)。
2004年11月27日
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